毎朝の食事を抜いて仕事や学校へ出かけたり、残業や塾などで遅くなったものの何もたべないで満員の通勤電車で帰宅。
特に体調が悪い訳でもないのに、急に全身の血の気が引くような、めまいや冷や汗、眠気が生じてしゃがみ込んでしまう…。このような症状では、特に女性の場合はまず貧血が一番疑われますが、血糖値が正常の範囲を超えて下がってしまう「低血糖」を起こしている可能性があります。一体どのようなものなのでしょうか。
糖尿病患者だけではない!
血糖値とは、文字どおり血液中のブドウ糖(糖分)の濃さを表しており、70~120mg/dlぐらいが一般的な正常値といえます。この数値が、60~70mg/dl以下に下がってしまった状態を低血糖といいますが、男女という性別や年齢や体質、妊娠の有無などによって、基準の数値より血糖値が下がっても特に症状が出ないこともあります。
一般的に、低血糖は主に糖尿病患者が起こしやすい症状として有名です。が、血糖降下薬やインスリン注射による治療を受けている人が、空腹時などに薬が効きすぎて、血糖値が下がりすぎてしまうことによるものです。
しかし、”食事を抜く”などの偏った食生活、糖分の摂取しすぎなどにより、子どもや健康な人でも低血糖を起こしやすくなっています。これは、糖分を多く含むお菓子やジュースをとる。その結果、急激に血糖値が上昇する。更には体が血糖値を下げるホルモンのインスリンを分泌して血糖値を正常に戻そうとする、というサイクルによるものなのです。
人体の正常な働きにはなるのですが、大量の糖分を摂取しすぎて血糖値が急上昇 ⇒ インスリンを分泌して血糖値を下げる、という反応をしょっちゅう繰り返していると、膵臓(すいぞう)の働きが制御できなく、なんでもない普段時でもインスリンを分泌したり、ごく少量の糖分に過剰反応してインスリンを必要以上に分泌するという事が起こってきます。これが、近年問題となっている低血糖症のメカニズムなのです。
どんな人が低血糖症になりやすい体質なのか??
貧血体質
貧血などの症状があると腸粘膜細胞が酸素不足になって、消化吸収に支障をきたします。貧血体質ですと、血糖値が下がるためエネルギー不足となり、結果 ⇒ 疲れやすい&集中力がなくなります。
普段の食生活で鉄分を意識して食事を採りましょう!ダイエットによって貧血体質になっていると、いっそう低血糖症になりやすくなります。
下垂症、胃酸過多症
胃下垂(下垂症)の人は胃壁の弾力が弱い、食べ物が充分に消化されず、胃袋に食べたものが溜まります。このため、消化不良になります。必要な栄養素を充分に吸収ができないために、鉄欠乏性貧血なりやすい体質になります。貧血体質になると低血糖症になりやすくなるのは前述のとおりです。
胃酸過多の場合には、カルシウムの吸収力が低下して、イライラしやすくなることがあり、ストレスにも弱くなります。これらも低血糖症を引き起こしやすい体質の一つです。
感情の不安定も問題に
低血糖の状態に陥ると、上記のように空腹感やめまい、ふらつき、冷や汗、吐き気、眠気といった症状を感じるほかに、「やる気がでない」「ぼ~っとする」「イライラする」「感情のコントロールができない」といった、うつ病に似た症状が起こることもあります。
「お腹がすいてイライラする」というのは、まさに低血糖の症状ですね!!低血糖になると「攻撃ホルモン」といわれるアドレナリンが大量に分泌されることが原因になります。低血糖は人間の精神の健康にまで影響する症状なんです。また、最近ではお菓子やジュースの食べすぎ飲みすぎによる子どもの低血糖症も問題となっており、低血糖が集中力の低下や落ち着きのなさ、性格の不安定、キレやすさの原因となっているという指摘もあるほどです。
食後の眠気の原因は低血糖!?
おなかがいっぱいになると・・・『ふぅ~眠いなぁ~~』と眠くなるのは生理現象だからしょうがないでしょ!?と思っていませんか?実は食事の摂り方を工夫するだけで「食後の眠気」が防げるかもしれないのです。
その眠気の原因は「低血糖」かも
食後の眠気の主な原因として2つあげられます。
一つ目は、食べ物を消化するために血液が消化器官へと集中し、脳への血液循環が減ることが原因によるもの。これは一番知られていますね。
しかし、食後の眠気を引き起こす原因として、もう一つあまり知られていないものがあります。それが「低血糖」です。
低血糖というと、糖尿病患者さんが使用する薬によって引き起こされると思われるかもしれません。しかし、健康な人でも食事の方法によっては低血糖状態に陥ってしまうこともあるんです!!!
低血糖による食後の眠気の正体は炭水化物にあった
「低血糖」とは、血液中のブドウ糖が足りていない状態のことです。
ブドウ糖は脳の活動に重要であり不可欠な成分。ブドウ糖が少ない状態では脳の動きは低下して、その結果眠くなってしまうのです。
では、なぜ食後に低血糖になってしまうのかというと、食事により急激に血糖値が上昇すると、それを下げようとして、「インスリン」というホルモンが過剰に分泌されるからなのです。

食後に血糖値が急激に上がってしまう原因は、炭水化物に含まれる「糖質」が体内で消化され、「ブドウ糖」に変化するから。
つまり、「炭水化物を摂り過ぎると血糖値の急激な上昇による低血糖を招く」ということがいえます。
そのため、いつもと食事の内容を少し変えるだけで、低血糖による食後の眠気を防ぐことができるのです。
1. 炭水化物だけの食事はやめる
炭水化物だけの食事は危険です!吸収する栄養素のほとんどが糖質なので、血糖値を急激上昇させます。
例えばこんな食事はしていませんか?思い当たる方は要注意です。
カレーライス
ラーメン+ライス
菓子パン
コロッケ定食
うどんとおにぎり
これらの組み合わせは炭水化物と炭水化物の重ね食べになります。ついついやってしまいがちな組み合わせですが、血糖値の急上昇につながりますので、食物繊維の多い野菜などをプラスするようにしましょう。
2. 白米・白いパンを玄米・ライ麦パン・玄米パンに変える
白米や白いパンはほとんど糖質ですがライ麦や玄米には食物繊維も含まれているので、血糖値をあげにくくします。 白いものより色のついたもの、と覚えるとよいでしょう。 次の表は血糖値を上げにくくする代表的な食品の例です。食事の際の参考にしてください。![]()
3. 糖分を控えるため、甘いデザートや缶コーヒー・清涼飲料水は控える
例えば缶コーヒー(小)場合はスティックシュガー6本分程度使用しているものもあり、 清涼飲料水の中には15本分 もの糖分が含まれているものもあります。 食後の缶コーヒーはカフェインの影響で一時的に目が覚めるかもしれませんが、しばらく すると低血糖状態に陥ることもありますので、注意が必要です。
低血糖で考えられる重症な病気!!!!
脅すわけではありませんが、低血糖の症状が現れる病気もいつくかあります。
ガンもそうですが、腎不全や心不全など、ショック症状といった重篤な病気の場合。
自己免疫疾患によるインスリン分泌の変化など
下垂体・副腎・甲状腺などの機能不全などの疾患などでも十分起こる病気です。
副腎または下垂体のホルモン産生量が出来なくなる、低下する病気
(中でも重要なのがアジソン病)は低血糖を起こす。
ウイルス性肝炎、肝硬変、肝臓癌(かんぞうがん)などの肝臓疾患をもつ人は
肝臓に糖を蓄えることができず食後低血糖になる場合があります。
低血糖の対処法は?
昔から「アメだまやクッキーなど手軽に効率よく糖分を摂取できるモノ」を用意しておくと良いと言われていますが、この方法だと逆に・・・菓子を手元に置く習慣をつけると、ついつい手が伸びて食べ過ぎてしまった!!という欠点があります。そのため、低血糖には、お菓子よりも薬局やドラッグストアで売られているブドウ糖のタブレットを携帯用としてカバンにしのばせておき、症状が出たときのみ摂るようにするとよいでしょう。
低血糖になりやすい体質を改善するには、普段からお菓子やジュース、菓子パンなど糖分を多く含む食品を摂取しすぎないように心がけることと注意することも大切です。見落とされがちなものとして、ブラックや微糖タイプ以外の缶コーヒーや、エナジードリンクがあります。実は多量の砂糖を含んでいるんです!!毎日飲む習慣(売店などでついつい・・・)がある人も多いため、自分が「あれ??イライラしやすくなっている!?」と感じたら、思い切って飲むのを辞める決断も心身の健康のためには良いかもしれませんね!
自分へのご褒美としての「甘い物」もときには必要ですが、くれぐれも食べ過ぎには注意して、習慣にならないように気をつけることが大切です。
☆ 低血糖の食事療法 ☆
低血糖症状が現れた場合はそのときどきの症状や時間帯などで対応方法が違ってきます。
またその回復にも差が生じます。摂取する糖質によって以下のような違いがあります。
- 単純糖質(ブドウ糖、砂糖など)を摂ると・・・血糖は速やかに上昇するが、下降も早い
- 複合糖質(ご飯、パンなどの食品)を摂ると・・・血糖は緩やかに上昇、下降も緩やか
軽度の低血糖(強い空腹感や倦怠感など)
- 食事前であれば(症状が自分でわかれば)、早めに通常の食事を摂るようにする。
- それ以外の時間帯であれば、ブドウ糖、砂糖、缶ジュースなど(簡易的なモノをいつでも取り出せるように)を摂り、症状が消えてから早めに次の食事を摂る。
比較的重い低血糖(冷や汗、動機、脱力などが強い時)
- 直ちに、ブドウ糖、砂糖、またはそれに相当する缶ジュースなどを取る。15分以内に症状の回復がなければ同じ対応を繰り返す。
- 症状が消えたら、食事前なら食事を、次の食事まで1時間以上あれば、1~2単位の炭水化物を取る。
もしもの自分だけでは対処出来ない時に・・・
貧血だと思っていたものが・・・低血糖!???これが、いつも自分で対応や処置できる低血糖症状ばかりとは限りません!自分では対応出来ない時でも、もしもの緊急事態を回避できるように身近な人や家族にも低血糖について知っておいてもらうことや、緊急時に身近な人のいない状況でも常にIDカードを携帯して周囲の人の協力が得られる態勢を整えておくことが大変重要です。「もしも」の準備・心構えをもっておきましょう。
意識がある場合
- ブドウ糖を5~10g含むものや、またはブドウ糖を含むジュース150~200mLを摂ります。ブドウ糖や砂糖以外の糖分は効果が出るのがたいへん遅くなります!注意が必要ですね。10~15分ほど経過しても症状がよくならない、または血糖値が60mg/dL以下であれば、もう一度、同じようにブドウ糖や砂糖、ジュースをとりましょう。
意識がもうろうとしている・・・自分で対応できない場合
- ブドウ糖を症状によっては自分で飲むことができない場合もあります。身近な人や家族などに手助けをしてもらったり、飲み込む事が困難であればブドウ糖や砂糖をクチビルや歯肉に塗りつけてもらうなどの対応をしてもらいましょう。これらは応急処置と考えて、その後はすぐに病院、主治医に連絡を取り医療機関を救急受診しましょう。